第344号【特別】(5月26日)「民営化委員会議事速報:道路公団にも広がる橋梁談合の闇」
2005年5月26日 (木)
2005年05月26日発行 第0344号 特別 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■ 日本国の研究 ■■■ 不安との訣別/再生のカルテ ■■■ 編集長 猪瀬直樹 ********************************************************************** http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 『ゼロ成長の富国論』 では、どうすればいいのか――。 増刷出来! ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 二宮金次郎の銅像が背負う薪に隠された深い意味とは? 人口減少社会を生 き抜く智恵を探る最新作『ゼロ成長の富国論』(文藝春秋 1400円+税)が発 売されました。 『ゼロ成長の富国論』は、『日本国の研究』『道路の権力』で「官」主導経済 の行き詰まりの構造を明るみに出した猪瀬直樹が、「ではどうするのか」を江 戸末期に改革に成功した金次郎の手法から考える注目作です! ○○○○○○○○○●●●●●●●●●●●●●●●●●○○○○○○○○○ ○ 『三島由紀夫が死んだ日』(編・監修 中条省平) ○ ○ 好評発売中! ○ ○○○○○○○○○●●●●●●●●●●●●●●●●●○○○○○○○○○ あの日、何が終わり何が始まったのか。三島由紀夫が1970年11月25日、自衛 隊の市谷駐屯地で衝撃的な自殺を遂げてから35年、アンソロジー『三島由紀夫 が死んだ日』(実業之日本社 1800円+税)が好評発売中です。猪瀬直樹も 「消された歴史の舞台」と題して筆を執り、複雑怪奇にして魅力的な天才作家、 三島の実像に迫っています。ご一読を! 県立神奈川近代文学館では現在、三島由紀夫回顧展記念が開かれ(6月5日 まで)、猪瀬も5月29日、「三島由紀夫という作家」という演題で講演します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「民営化委員会議事速報:道路公団にも広がる橋梁談合の闇」 官公庁が発注する鋼鉄製橋梁工事の入札をめぐる談合事件で、東京高検は5 月26日、横河ブリッジ橋梁営業本部総括部長らメーカー11社の担当者14人を、 独占禁止法違反(不当な取引制限)の容疑で逮捕しました。 直接の容疑は国土交通省の3地方整備局発注工事をめぐる談合ですが、日本 道路公団発注の橋梁工事でもまったく同じ構造が繰り返されていた疑いが極め て強い。公団発注の鋼橋工事の市場規模も1000億円。5年間で4849億円、42 9件の工事のうち7割超を、捜査の対象の47社が高い落札率で受注していたの です。5月24日の民営化委員会の請求で提出された資料であきらかになりまし た。 くわしくは、6月2日発売の週刊文春のコラム「ニュースの考古学」で記し ていますが、今週号のメールマガジンではこの日の民営化委員会の議事速報。 答弁をするのは道路公団の技術系トップである内田道雄副総裁です。大宅映子、 猪瀬直樹両委員の追及に知らぬ存ぜぬの「ウソ」を繰り返し、わずか30分強で 逃げるように退席しました。 ---------------------------------------------------------------------- ■“談合なし”とシラをきる ●猪瀬○ 内田副総裁は技術系になりますね。談合は内田副総裁でないとわか らないと思って委員会にきていただいた。猪瀬委員提出資料を見てく ださい(編集部註:資料は近く民営化推進委員会のホームページに掲載されま す)。色が塗られているところは、いま新聞紙上をにぎわせているK会・A会 の関係なんですね。「第二東名高速道路高岡高架橋工事」とありますが予定価 格65億円に対し落札率は98.12%。これは全部真赤っか。これをみると、明ら かに談合であります。どのように認識されていますか? ●内田道雄副総裁○ 技術系だからわかるということではないと思いますが、 いまの数字ですが、私どもとしては競争の結果、生じたものだと認識 しております。 ●猪瀬○ これがなんで競争の結果だと説明できるんです。 ●内田○ 私どもはきちんとした競争入札の手続きを行って契約に至っている。 ●猪瀬○ 公団の発注の落札率の平均が97パーセントなんですね。それでもち ろんところどころ47社やその関連会社ではない業者もある。すべて が談合だといいませんが、ほとんどの入札にK会A会が入っている。これは談 合でしょう。 ●大宅○ これをみていて気づいたんですが、同じ会社が続けて二回とってい るということはないんですね。全部まんべんなく。ふつうだったら 同じ会社が並ぶことがあると思う。地域が違っているとしても、かならず同じ ところはないということがわかりますね。 ●内田○ 私どもとしては競争の結果と思っている。K会とかA会というのは 新聞紙上をいま賑わせていますが、当局も調査中だと思いますので 私はコメントを控えさせていただきたい。 ●猪瀬○ これが談合でないとしたら、あなたは責任者として自覚足りなかっ たのではないですか? つまり予定価格に対して落札率97パーセン ト、98パーセントであれば、これは談合の結果だと誰でもふつうに考えます。 それを考えないとしたらおかしい。認識足りないのではないか。 ●内田○ 私どもとしては談合と断定する根拠もございません。すくなくとも 今回の件に関しては当局が調査をしておりますし、その結果を見守 りたい。少なくとも、落札率が高いから談合だと決めつけるのはいかがか。予 定価格は積算に係る基準も公開しており、かなりのものは業界の方でも積算で きる。 ●猪瀬○ 繰り返しますが、いままで談合はなかったと思っているわけですか。 道路公団の発注工事は談合というものはない、と認識されている? ●内田○ 私どもはそう信じて業務を進めております。過去にあった談合につ きましては、こういう談合のないように、業界の方々に文書でも要 請もしてきましたし、適正に執行されてきたと信じております。 ●猪瀬○ 内田副総裁は信じても、こっちは信じられないんです。ファクツか ら積み上げてものを考えると、例外というものはない。一部、国土 交通省の談合の問題で出てきたのは福島県の業者が入ってきた競争入札の結果 は、落札率が60パーセントぐらいに落ちている。道路公団の入札は全部97パー セント前後なんですね。ここに平均値を示しましたが、そう考えればどう考え ても談合としかいいようがない。談合でないと、なにをもって信じるわけです か。いちども談合の疑いをもたずにきたわけですね。 ●内田○ 当然談合であると疑いをもっていればしかるべき措置をしておりま したし、この結果をもって即、談合の結果であると断定することは できない。 ●猪瀬○ 公正取引委員会は国土交通省の談合問題について調査し、道路公団 の談合もやると新聞には報じられていますね。そのときは内田さん はどうするんですか。 ●内田○ 仮定の話なのでお答えしにくいのですが、談合という事実が明確に 判明した場合は、私どもは内規にしたがってしっかりとした処置を していきたい。 ■K会・A会を“初めて知った”道路公団の役員 ●猪瀬○ 談合であるという根拠についてひとつ申し上げたいのは、橋梁談合 の47社のうち、34社に39人が道路公団から天下っている。道路公団 から橋梁メーカーに天下りしているということです。では、こういう天下りは 談合と無関係だと思いますか。 ●内田○ ……私どもの公団の職員が退職して私企業に就職するのは個人の職 業選択の自由であり、今回の談合とは無関係と認識しております。 ●猪瀬○ 橋梁メーカーにOBが就職するというときに一定の歯止めがあるは ずですね。ふつう役人が天下りする場合には何年間はいけないとい うような規定がありますね。道路公団の場合は直に入っていいわけことになっ ている。ふつう、発注側から受注する側に人が流れていったら、ルールとして は違反です。 ●奥山裕司理事○ 一般的な国家公務員同様の規制があるかということですが、 規制はございません。国家公務員法によりますと、103条に私企 業からの隔離、それから人事院規則に営利企業への就職についての規制がござ います。 おっしゃるように離職後二年間は離職前5年間に在籍していた、密接に関連 のある営利企業企業にきてはいけないというんがありますが、道路公団ではそ のような規定はございません。私どもの職員は退職後に国家公務員ではなく民 間企業の職員になります。副総裁が申し上げましたとおり、退職後に民間企業 に再就職することについては職業選択の自由に関することでございます。基本 的には当事者と本人の私的な問題であり、公団として規制を行う立場にはない と考えますが、公団の役職員の再就職が国民の皆様方の不信とか誤解を招くこ とがないように、より一層の配慮、指導が必要だと考えております。 ●猪瀬○ とくに規制がないということですね。内田副総裁に聞きたいのです が、「かずら会」という名前、知っていますね。 ●内田○ 新聞で拝見して承知しました。そういうものがあるということを。 ●猪瀬○ それまで知らなかった? ●内田○ 知りません。 ●猪瀬○ それはウソでしょう、聞いたことないわけないでしょう。 ●内田○ ウソではありません。 ●猪瀬○ かずら会というのは公団OBの間では有名じゃないですか。あなた はこの委員会でウソを言ってるんですよ。 ●内田○ ウソではありません。知りませんッ。新聞で知りました。 ●猪瀬○ それはウソでしょう。かずら会を知らなければもぐりですよそれは。 業界でOBがかずら会に入っているのは常識でしょう。これは記録 にとどめておきますよ。後でこれがウソだとわかったらどうなりますか。 ●内田○ うそではありませんので、そういう仮定の話にはお答えできません。 ●猪瀬○ 仮定の話ではないですよ。かずら会がまとめている、といわれてい るんです。では、(K会・A会の前身の)紅葉会、東会というのは ご存知でしたね。 ●内田○ それも知りません。新聞で知りました。 ●猪瀬○ それはよくわからないですねえ。そういうウソをおっしゃったとい うことを記録にとどめておきます。 ●内田○ ウソではないということをはっきり申し上げます。 ●猪瀬○ これだけ談合が公然と行われていて、K会・A会というのは業界で 有名ですよ。K会・A会があることが業界の情報として入ってくる のが当然でしょう。 ●内田○ すくなくとも私は業務のなかでK会・A会というのを聞いたことが ありませんし、新聞で初めて知りました。 ●猪瀬○ そんなわけがない。道路公団の中でK会・A会というのは飛び交っ ているのですから。 ●内田○ 何を根拠に道路公団の中に飛び交っているとおっしゃっているのか わかりません。 ●猪瀬○ 発注側として、競争入札を本当にしているかどうかわかりませんが、 入札をしている人たちと関係あるわけですから、どのような会があ るか、気をつけなければいけない情報として入ってくるはずです。そういう警 戒感もなかった? ●内田○ そういう情報は入っておりませんでした。 ●猪瀬○ それでは、K会が紅葉会でA会が東会という名前だったことも知ら なかったわけですね。 ●内田○ それも新聞で知りました。 ●大宅○ 紅葉会と東会というのは以前に談合の疑いがあったためになくなっ たことになって、それがK会・A会に移行したわけでしょう。 ●内田○ すくなくとも私はそのことを憶えておりません。 ■「そんなことまで……」 ●猪瀬○ では隣の奥田理事は新聞に載るまで知らなかったんですか、知って いましたね。 ●奥田楯彦理事○ 私も新聞に出るまでまったく知りませんでした。 ●猪瀬○ 奥田さん、別に内田副総裁に話を合わせる必要はないんですよ。紅 葉会と東会は91年に事件になって新聞に出ている。たかだか10年ち ょっと前ですよ。知らないわけがない。 ●奥田○ そういう事実があったことは新聞で今回はじめて知りました。私も ずっと契約の仕事をしていれば、こういう勉強をしていたかも知れ ませんが、契約の担当になってから別の仕事をやっておりまして、今回の事件 までまったく認識しておりませんでした。 ●猪瀬○ 内田副総裁、公団が発注する工事の規模はどれくらいですか。 ●内田○ ちょっと私はいま把握しておりませんので、誰かわかる人いるかな。 ●大宅○ それは常識でしょう。91年に談合で新聞沙汰になって業界が疑わ れていた。それなのに契約業務を担っていなかったか知らないとい うのは、トヨタが「貿易業務やっていなかったからアメリカとの貿易摩擦につ いては知りません」と言っているのと同じことのように聞こえるんです。そん な馬鹿なことありうるんですか。自分の目の前に与えられた業務だけやってい ればいいというか、建設がどうなっているとか、鋼材とPCでもどんな割合か もわからないって、自分の目の前に与えられたことだけやっていれば済むとい うそんなずいぶん“いい社会”みたいですね。 ●内田○ 過去にそういう談合問題あったことはぼんやりと憶えていましたが、 それがK会とかA会とか、そんなことまで憶えておりません。 ●大宅○ そんなことまで? たいへんな問題じゃないですか。 ●猪瀬○ じゃあ、知らなかったということにして、落札率が97パーセントに なったことを不自然だというふうには思いませんか。 ●内田○ 先ほど申し上げましたように、あくまでも公正な競争の結果だと認 識しております。 ●猪瀬○ 公正な競争では97パーセントにはなりません。 ●内田○ 何を根拠に97パーセントにならないとおっしゃっているのかよくわ かりませんが。 ●猪瀬○ ふつうの競争入札はそうではないからですよ。この5年間の鋼鉄製 橋梁工事の合計はいくらかご存知ですか。 ●内田○ 表をたしてみますと、(5年間で)4849億円でございまして、平均 落札率が97パーセントということになります。 ●猪瀬○ つまり5000億円近い発注をしている。年間約1000億円の発注が行わ れる。実際の価格は競争入札が行われている場合に、仮に年間1000 億円ではなくて年間700億円であったならば、300億円は違ってくる。5 年間で1500億円は違ってくるんですね。そう想像できる。その分だけ国民の負 担が大きくなっていると我われはふつう考える。 ●内田○ まず私どもは過去のデータに基いてきちんとした積算基準に基いて、 予定価格というのを決めております。その範囲内で落札されている わけですが、その結果が97パーセントであったということですが、それが談合 であったという事実も確認されておりませんし、(べつの形で)入札したら安 くなっただろうという根拠もありません。ちょっとすいません、私でかけなき ゃいけないんで。(……退席) ━猪瀬直樹のスケジュール━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【テレビ出演】 ・レギュラー出演のフジ系『ワッツ!? ニッポン』(毎週土 10:00?)に 出演するほか、 ・朝日ニュースター「月刊 ニュースの深層」(毎月末土曜日 22:05?)に 新キャスターとして登場しています! 今回は5月28日です。 ・5月29日(日) 日本テレビ系『THE・サンデー』(8:00?) ・5月29日(日) TBS系『サンデージャポン』(10:00?)にもVTR出 演します。 ・5月31日(火) テレビ朝日系『ワイド! スクランブル』に生出演します。 ━━━━◇「日本の近代 猪瀬直樹著作集」全国書店で絶賛発売中◇━━━━ 文学、歴史、ジャーナリズムを志す人びとへ…必携の著作集 全12巻/各巻予価1300円/小学館刊 http://www.inose.gr.jp/list/index.html *本の検索・購入はこちらから* オンライン書店ビーケーワン http://www.bk1.co.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ バックナンバーはこちら。 http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html ご意見・ご感想はメールでどうぞ。 info@inose.gr.jp 配信の取り消し手続はこちらから。 http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html 猪瀬直樹の公式ホームページはこちら。 http://www.inose.gr.jp/ ○発行 猪瀬直樹事務所 ○編集 猪瀬直樹 ○Copyright (C) 猪瀬直樹事務所 2001-2005 ○リンクは自由におはりください。ただしこのページは一定期間を過ぎると削 除されることをあらかじめご了解ください。記事、発言等の転載については 事務局までご連絡くださいますよう、お願いします。