[MM日本国の研究740]「東京都職員 入都式の猪瀬直樹知事挨拶―自分の言葉を持つ職員になってほしい」
2013年04月04日発行 第0740号 特別
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■■■ 日本国の研究
■■■ 不安との訣別/再生のカルテ
■■■ 編集長 猪瀬直樹
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■□■ 『東京からはじめよう』(MXテレビ) ■□■
4月6日(土)21:00-21:55(毎月第1土曜日)
ゲスト:乙武 洋匡(作家)
今月のゲストは、作家であり、2013年3月に東京都教育委員に就任した乙武
洋匡氏です。東京都の教育問題について語ります。
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東京都職員 入都式の猪瀬直樹知事挨拶
「自分の言葉を持つ職員になってほしい」
□ 民間企業も責務を果たす帰宅困難対策条例が施行
皆さん、入都、おめでとうございます。心から歓迎します。
2年前の3月11日、東日本大震災が起き、そして東京では350万人の帰宅
困難者が出ました。2年前の入都式は、石原前知事が防災服でこの入都式に臨
みました。後ろの局長も副知事もみんな防災服です。そういう入都式もあった。
まだ、あの震災から2年しか経っていません。
今日4月1日は、帰宅困難者対策条例が施行されます。これはどういうもの
か。50万人が、あの3月11日の夜、自宅に帰れずに、駅や路上、そしてこの芸
術劇場や東京都庁、さまざまなところに避難した。あるいは10キロ、20キロの
道を、真夜中に歩いて帰宅した。
帰宅困難者対策条例は、それぞれの民間企業に72時間、3日間の備蓄の義務
を課す。本来ならば、行政がやらなければいけないことです。
しかし、東京都や区役所やあるいは国家の機関など行政が力を尽くしても、
民間企業もそれぞれ責務を果たさなければその危機は突破できない。民間も責
務を果たすというのは、とても今まででは考えられないことでした。
民間企業が72時間分の水や毛布や食料を揃え備蓄する、そして、行政も民間
も一体となって、危機を乗り切る、首都直下型地震がこれから起きるかもしれ
ない、あるいは、さらには、立川断層帯もある。あるいは東南海地震もある。
今までの考え方は、行政は行政、民間は民間だった。そうではなくて、自助、
共助、公助、みんなで助け合う、そういう日本を作っていかなければいけない。
そして、あの震災のときに、東京消防の活躍もありました。東京都の行政職員
が被災地に行って、一生懸命働きました。被災地の人だけで復興はできない。
東京都職員が現地で、事務官だけでなく医師も看護師も、そして土木技術者も、
現地に行って手伝った。こうしてなんとか危機を乗り切っていく。
□ 首都公務員は120点満点
6年前、夕張市が破綻した。破綻して夕張だけでは生きていけないというと
きに、東京都から職員を派遣して、27歳の若い職員が2人、2年間、夕張市の
職員になりました。東京都から出向しました。
それから、1週間単位で研修に行く若い職員、合わせて100人ぐらいにな
ります。そのうち、ずっと夕張にいた職員が、30歳で夕張市長になりました。
東京は日本の心臓です。東京のこの心臓の鼓動が止まれば、日本全体が立ち行
かなくなる。したがって、皆さんの仕事、100点満点ではない。
皆さんは、東京都の職員、法律的には地方公務員ということになるが、そう
ではない。首都公務員、国家公務員でも地方公務員でもない、首都公務員であ
るということを、常に自覚していただきたい。首都公務員は、120点満点で
す。100点は東京都のためにやるが、残り20点は、日本を支えるために働く。
そういうつもりで今日、東京都の職員になるのです。
「役人」という言い方がありますね。「役人は結局融通がきかないのだよ」と
言われる。そういう役人に対する否定的な言葉があるということを、絶対に忘
れないでいただきたい。もし、民間企業だったらどうだろう。民間企業だった
らどんなことをするだろう。我われは、法律とか条令に基づいて仕事をする。
しかし、法律とか条令というのは、昨日作られた世界。昨日の世界です。今日
起きたことに臨機応変に対応できるかどうか。いわゆる“役人根性”ではでき
ない。
今起きていることに対して、多少これは前例がないか、規則にちょっと違う
かと考えるとしても、運用で解決できることはいくらでもある。機転を利かせ
れば解決できることはいくらでもある。そう考えてほしい。
秀才になってはいけません。秀才は隣の秀才を見て、また隣の秀才を見て真
似る。秀才でなく、変人です。変わっていていい。自分の考えを持てる人間。
自分だけの発想を持てる人間。ひらめきがある人間。そういう人間になって、
東京都を支えてほしい。みんなと違っていてかまわない。ただ、秀才の反対は
変人ということだけではない。プロフェッショナリズムです。この仕事はプロ
の仕事として、本当にプロの仕事になっているかどうか。プロフェッショナリ
ズムに基づいた自覚を持っていただきたい。
当たり前だが東京都の職員は、新聞もテレビのニュースも、そして本もたく
さん読んでほしい。情報の感度をよくしてほしい。どうしても役人になると、
今起きていることについて鈍感になりやすい。もちろん、SNS、ツイッター
やフェイスブックもきちんと見て、そして自分の考えを持つ、自分の言葉を持
つ、自分の発想を持つ、そういう職員になってほしい。
東京はいま、2020年開催のオリンピック・パラリンピックに立候補していま
す。招致レースの正念場です。なぜ東京にオリンピックを持ってくるか。
□「少年よ、大志を抱け」と翻訳した明治人
世界都市ランキングというのがあります。東京は、ロンドン、パリ、ニュー
ヨーク、についで第4位です。しかし、観光客の数がいちばん少ない。そして、
なんとなく住民一人ひとりがバラバラになっている。共通の目標を持つことが
できなくなっている。そういう中で、スポーツの力を通じて、一人ひとりがつ
ながっていくような、そういう輝く、一人ひとりが輝く東京にしていきたい。
もし、東京オリンピック、パラリンピックが東京に決まれば、世界中から沢山
の人が来ます。
先日行われた東京マラソンで、東京はワールド・マラソン・メジャーズに加
入することができました。ベルリン・ボストン・ロンドン・シカゴ・ニューヨ
ーク、そして、東京。世界六大メジャーズと言われているマラソンに加入する
ことができました。2時間4分台の選手が沢山参加しました。東京では3万6
千人のランナーが走り、沿道に170万人の観客が出た。しかし今から申し上
げたいのはそのことではなく、それを支えた1万人のボランティアがいたとい
うことです。
新宿の都庁で、上着を脱ぎスポーツウェアに着替えて、服を都庁に置き、ス
タートしてビックサイトがゴール地点。すると自分の着ていた服がそこにある。
3万6千人の服が、全部そこにあってひとつも間違いなく、ホテルのクローク
のように戻ってくる。
これは1万人のボランティアの力です。そしてもちろん、都庁の職員がそれ
を支えます。こういうホスピタリティ、こういう細やかな気の使い方や、洗練
された仕組み、それは、東京が沢山の高層ビルがあり、沢山の車が走り、沢山
の工場がある。そういうことだけではなく、我われ自身の持っているホスピタ
リティ、我われ自身の持っている、本来、日本人としての本来持っている力。
それが例えばいま挙げた例で表現できる。このホスピタリティを2020年東京オ
リンピック・パラリンピックで世界に示すことができる。この目標を持って、
ぜひ皆さん、仕事を一生懸命やってほしい。
繰り返しますが、役人らしくない役人になってほしい。公務員は、ただ会社
の中で利益を上げるだけではなくて、人のためにサービスを提供する。そのた
めに税金を徴収している。納税者に対して、自分を犠牲にしても働く。こうい
う大きな気持ちを持っていただきたい。
明治時代、札幌農学校でクラーク博士が「ボーイズ・ビー・アンビシャス」
と言いました。「少年よ、大志を抱け」という言葉で翻訳されている。翻訳し
た明治の人が優れている。そのまま訳せば「若い人は野心を持て」です。そう
ではない。大きな志を持てと翻訳した、その明治人の、その素晴らしさ。一人
ひとりが、ただ野心を持つのでなくて、みんなで人のためになる、そして自分
のためにもなる世界を作り上げていこう、そういう意味で、野心という言葉を
大きな志と訳した。
我われ自身がどういう言葉を使うか、一つひとつの出来事にどういう言葉を
当てはめるか。それがいちばん大事なのです。何かを見た時に、ふつうに使わ
れている言葉でなく、別の言葉で表現したらもっと分かりやすくなる。あるい
は、もっと自分の気持ちが込められる。そういう言葉を探す。
ただの秀才になってはダメです。今日、入都式で覚えておいていただきたい。
首都公務員であること、120点満点、自分の言葉を探す、昨日の世界は今日
と違う、そういうことを、今日頭の隅に残しておいてください。自ら課題を見
つけて、古い常識にとらわれず、縦横無尽に活躍することを期待します。
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「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp
猪瀬直樹の新着情報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■出演情報
・4月6日(土)21:00~21:55 MXテレビ9CH『東京からはじめよう』放
送。ゲストは乙武 洋匡氏(作家)です。
■掲載情報
・4月5日発行『潮』5月号、連載対談「日本を変える次世代の騎手たち」
第11回にオイシックス代表取締役社長 高島宏平氏との対談「生産者と消費
者をつなぐ商品の『ストーリー』」が掲載されます。
・4月10日発行 たちばな出版『伝統と革新』に、五輪招致などについてのイ
ンタビューが掲載されます。
・3月22日発行月刊『BOSS』に、五輪招致などについてのインタビューが
掲載されました。
・3月15日発行月刊『都政研究』に、都知事就任の抱負と課題が掲載されまし
た。
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□■『解決する力』■□
(PHPビジネス新書 840円(税別))
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「東京電力とのバトル」、「オリンピック招致」、
「災後社会のネットワークづくり」など、
東京都のマネジメントに絡む出来事をネタに、問題解決力を磨く考え方、
行動の仕方、強いメンタルの保ち方などをわかりやすく説く!
「その日までが勝負」と「その日のみの勝負」
改革とは具体的な数字を示すこと
決断は見切り発車で
ツイッターがつないだ奇跡の絆
日本人に足りない言語技術力
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□■『地下鉄は誰のものか』ちくま新書 税込735円■□
東京の地下鉄は2つの事業体によって運営されている。
そのためとんでもない不便を強いられているのは
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改革のためには通勤苦の現状をよしとする
既得権益者との戦いが必要であり、
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大震災後、東京都を陣頭指揮する副知事の思考と行動20カ条
首都直下型地震への取り組みとは何か
□■『決断する力』■□
(PHPビジネス新書 税込840円)
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「いざ」というとき、立ち止まるな!
走りながら考えろ。
ソーシャルネットワークを使った情報収集・発信・即断即決→事後承認、
見えない恐怖を可視化する、先を見通してリスクの芽を摘む、昨日を基準
に今日を生きない……。大震災後、東京都を陣頭指揮するリーダーが、
首都直下型地震対策として自ら実践しているノウハウを、ビジネスマン
向けにアレンジして紹介!
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□■『東條英機 処刑の日 』■□
〔アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」〕
(文春文庫 税込630円)
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猪瀬直樹氏は、
子爵夫人の日記に残された謎を解き明かしながら、
アメリカが日本に仕掛けた
対日占領政策の大きな構図を浮かび上がらせていく。
それによって、現代の日本と占領期の日本との間に漂う
霧のような薄闇を払っていくのである。
梯久美子(「解説」より)
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12刷決定!
□■『昭和16年夏の敗戦』 □■
(中公文庫 税込680円)
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1983年に世界文化社から刊行され、文春文庫になり、『猪瀬直樹著作集』に
入り、ロングセラーとして版を重ね昨年6月に中公文庫に収録された作品です。
巻末には勝間和代さんとの特別対談「日米開戦に見る日本人の『決める力』」
が収録されました。
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大増刷出来!
□■『言葉の力――「作家の視点」で国をつくる 』■□
(中公新書 税込777円)
「東京都副知事で作家の言葉論。ツイッターで文章力を鍛えるには口語体では
なく文章語で書くことだと説く。読書は『10ページ読書』を勧める。それだけ
で頭の中に検索のキーワードができ上がると言う。また、小泉純一郎は<俳句
のように凝縮した1行の力強さがある>が、菅直人は<ページに言葉が埋まっ
ているだけ>といった分析等も興味深い」(読売新聞 8月14日付)
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作家として、東京都副知事として進める「言語力再生」。
サッカー界にも導入された「言語技術」やツイッターやフェイスブックなど
のソーシャル・ネットワークのほか、三島や太宰の文体にいたるまで、グロー
バル時代に不可欠なコミュニケーション力の目的・手段を独自の視点で解説。
第一部 「言語技術とは何か」
第二部 「霞が関文学、永田町文学を解体せよ」
第三部 「未来型読書論」
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□■『突破する力』■□
(青春出版社 税込800円)
7刷出来!
道路公団民営化をはじめ、作家として、東京都の副知事として、
さまざまな世間の“壁”を突き破ってきた著者が、
自らの体験を踏まえて綴る、人生を面白くする
本気の仕事&生き方論。
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